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山口と連れ添いながら、先ほどの騒がしかった部屋を横目で通り過ぎる。
部屋の中は荒れていて、揚羽の客は顔を赤くしに肩を怒らせて、廓の主人に怒鳴り散らしていた。
(揚羽も馬鹿よね。耐えてれば良いのに……ふふふ、またお説教部屋行きね)
そう心で揚羽を笑いながら、うっとりと山口の肩に頭を預ける。
「どうした緋暮?」
「いぇ、私は山口様に御贔屓して頂いて嬉しいな……って///」
「ふっ……本当にお前は可愛い女だな」
下心丸見えな笑みを見せる山口に、緋暮は頬を赤くして初々しい仕草見せる。
(まぁ、揚羽ならこんな事するくらいなら、死んだ方がましだとか思うでしょうね)
揚羽を思えば、つくづく嫌気がさして忌々しく思う。
自分は、嫌な客でも演技で自分の心を隠して客を取るとのに、揚羽は、演技など一切せず、素直なありのままの自分を見せる。
嫌いな客は何が何でも取らないと言って、会おうともしない。
そんなわがままは、普通の遊女には許されないが、揚羽はこの店の売れっ子でもあるため、わがままが許される。
(私は、ちゃんとお客を取って、大切にもしてるのに、何で、蔑ろにしてる揚羽にお客が付くのよ……)
考えながらも、隣にいる自分に貢いでくれる、この男にも、ちゃんと愛想を振るうのも忘れたりしない。
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