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「御馳走様……ん、いい時間だな。さっさと行くか」
朝食を終えて時計を見ると、遅くもなく早くもない、学校に向かうには最適な時間帯だった。
隙あらば抱き付こうとする彼方をヒラリとかわしつつ、父さんから弁当を受け取る。
「いってらっしゃい、頑張ってね?」
そう言って微笑む父さんに、私も笑顔で応えた。
「ん、いってきます」
「いってきます……!」
何故か武司に抱き抱えられたまま手を振る夏は、恋人というより、娘っぽいなぁ、という印象を受けた。
「春ー、春ー、いってきますのチューは?チュー」
「学校遅れるぞ」
唇を突き出す彼方を華麗に無視して、私は玄関の扉を押し開けた。
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