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「太子ーっ!!」
背後から名を呼ばれたかと思うと、突然目の前に逆さになった少年の顔が現れた。
「アダなっ?!!!!!」
驚いた勢いでつい変な奇声を上げてしまった。
「驚かせてしまって、すみません」
私の隣に座った少年は申し訳なさそうに謝る。
「私は大丈夫だから、気にしないで」
なるべく笑顔で言うと、少年は私の表情を伺いつつもつられて笑った。
笑顔がよく似合うやつだ。
「お前、名前は?」
「あれ?覚えてませんか?妹子です、小野妹子。覚えにくいですか?僕の名前…」
キョトンとする妹子と、同じくキョトンとする私。
妹子曰く、私たちは昨日もこの場所で会ったらしい。
その時にお互いに自己紹介をしたんだと・・・
主人格の私の記憶が無い時。
それは五人ワタシのうち、誰かがこの身体を使っていた証拠だった。
「えっと昨日、私さ、君に何か言ってた?」
「え?・・・えっと、死にたいとか、なんとかって言ってましたよ」
「死にたい」なんて言うのは三番目の私しかいない。
っという事は、昨日の私は三番目の私だったということか・・・
妹子の私との初対面は、どうやら三番目とだったらしい。
よりによって、あの死にたがりと。
運が悪かったとしか言いようが無い。
人は第一印象で大体初対面の人の性格などを想像する。
つまり、初対面から「死にたい」なんて呟いていた私の印象は「暗い」の一言に尽きるわけだ。
全く、勘弁してほしい。
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