不思議な人

5/11
前へ
/17ページ
次へ
「死にたいだなんて・・・そんな事を言わないで下さい。生きるのが辛いだなんて、悲しすぎます。僕みたいに笑ってみてください。笑っていれば、きっと良い事がありますよ」 突然声を掛けられて驚いているのか、僕の目の前のジャージの青年は目を丸くしていた。 「君は・・・?」 「僕は妹子っていいます。今、日和病院に入院中なんです」 「そっか、私は太子っていうんだ」 「太子さんですね」 「太子でいいよ」 「太子は、ここに入院してるんですか?」 「何でそう思った?」 「最近、よくここにいるのを見掛けるから」 「いや、入院はしてないよ。通院中なんだ」 「じゃあ、今日はもう家に帰っちゃうんですね・・・」 「・・・寂しいの?」 「えーと、寂しくはないかな…先生も友達も居るし。それに、今日は太子に会えました!!これもきっと何かの縁ですよ」 「なんで妹子はそんなに前向き思考なの…?」 「分かりません…でも、笑ってて悪い事はないですよ!!」 「うん…」 太子はそれから黙って、また俯いてしまった。 初対面でこんなに人と話した事がなくて疲れてしまったのか、と思っていると誰かが僕を呼ぶ声がした。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加