無題

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人は余りにも混乱すると、まともに反応する事さえできなくなるようだ。 それを証明するかのように、あたしは今、声さえ上げられず目の前の現状に立ち尽くしている。 目を見開き、口をあんぐりと開けた私の今の姿は、何とも間抜けに見えることだろう。 つまり、何が言いたいのかと言うと、混乱しているのだ。 おそらく、十六年間の人生の中で一番。 着ている制服も、履いているローファーも、持っているスクールバッグも、全てがびしょ濡れ。 濡れてペッタンコになった髪が顔に張り付いて気持ち悪い。 もちろん、雨が降った訳ではない。 今日の天気は快晴だ。 ――なぜ、こんなことになっているのか。 この状況を説明するには、少しばかり時間を遡らなければならない。
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