悪夢×二人

10/15
前へ
/99ページ
次へ
  「へえ、じゃあ本当は23歳?」 「関係ないよ。ここでは」 貘になると、時が止まる。 外である現実では確実に時が巡っていることは、扉の増減でわかる。 だけど、あたしたちは『止まって』いた。 それを思い知らされることが、バクは嫌いだ。 今も嫌そうな顔をしてあたしを見ている。 「……ね、あのさあ。こんなこと言って、嫌な気分になったらごめんねって感じなんだけど」 前々から、ちらついていた推測。 バクの性格からして、もしかしてこうなんじゃないかって思っていたこと。 「バクは、自分が『貘』から抜け出す事を諦めてるから、自分は『バク』だって『思おうとしてる』……の?」 「……どうして、そんなことを言うの? 『貘』の連鎖はもうやめようってことに決めたでしょ。俺たちは『貘』から戻れない。『戻らない』。そうなったっていうのに」 露骨に嫌悪感を露わにしたバクが答える。 『貘』は、人から人へと受け継がれてきた。 バクは、長身のお姉さんに騙されて。 あたしは、騙そうとして騙しきれなかったバクに『もう一つの可能性』を提示しようとして失敗して。 受け継がれる貘は原則として一人から一人へ、のはずだった。 だけど、あたしがあまりにもイレギュラーな方法を取ったから、今現在貘はあたしとバクの二人っていうことになっている。  
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加