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あたし達二人が貘から抜け出したければ、もう2人新しい『貘』の『犠牲』を出さなくてはならない。
そのはずだった。
「もしかしたらなにか方法もあるかもしれないじゃない。現にあたしは、バクが人間に戻ってないのに貘になっちゃったんだよ? その逆もあるかもしれない」
「あるかどうかもわからない、根拠のない希望にしがみつくのはやめたほうがいい。大抵裏切られるよ」
バクの特徴、もうひとつ。
ものすごくマイナス思考。
あたしは色んな可能性を考えたかった。
諦めたくなかった。
だけどバクは、諦めている。
「……そうだねぇ、じゃあ一つこうしようか?」
どこかおどけたような口調で言いながら、バクはかつかつと歩き出した。
あたしはそれに慌ててついていく。
いつのまにか、周りの扉は増えていた。
どうやらもう『夜』みたいだ。
「なに?」
「俺の名前。どうしても知りたければ、『貘』であることを受け入れて」
「……え?」
こちらを振り向くこともなく、提案される。
どうしてそれとそれが結びつくのか、あたしには分からなかった。
あたしが結構しつこく名前を聞きたがっていたからかもしれない。
どうしよう、と戸惑うあたしに気付いてか否か、バクは振り返った。
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