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「一つ答えようか。図星だよ。戻れない世界での名前なんて意味がないし、そもそも俺は自分の名前にあんまりいい思い出がない」
「そんなっ……!」
「……悪いね。俺にとって、『バク』も本当の名前も、どっちも死人としての名前なんだ」
そう言って笑ったバクの背中は、どこか寂しそうに見えた……気がする。
と、そのまま黙ってバクは夢の扉に入ってしまったので、あたしも慌てて後を追った。
悪夢である気配を感じ取ることは、あたしにはまだできない。
だからバクに頼ってついていくしかないのだった。
それに夢の中でも、実際動くのは殆どバクだけ。
今回もまた悪夢の核を見つけて捕まえると、彼はあたしに譲ってくれる。
今回はあたしの番、だったから。
あたしはまだ未熟だ。
バクみたいに本当に自由自在に、すぐになんでも出せるほど器用じゃない。
バクは空を飛んだり瞬間移動したり、ありえない動きをするけれど、あたしにはできない。
沢山並ぶ扉のどれが悪夢なのかも、ちっともわからない。
悪夢の中の『核』の気配も、バクと比べれば随分薄らとしか感じとれない。
それでもあたしを見捨てないで、あたしが消えてしまわないように、悪夢に入るたび交互に核を分配するようにしてくれている。
やっぱりバクは優しいんだと思う。
鬱陶しかったらあたしをどこかに置き去りにして、放っておいてもいいはずなのに。
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