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そんなバクに対して無神経な発言を浴びせてしまったことがなんだか自分の中で許せなくて、悪夢から出た後あたしはバクの服の裾を掴んだ。
「……なに?」
「いや、あのさ。ごめん。バクが自分の名前に対して嫌な思いがあったとか知らないで、無神経なこと聞いて」
「そんなこと気にしてたの?」
そう言ってまたバクは笑った。
いつも弱ったあたしに追い討ちをかけるときと同じ笑顔。
だけど、そうじゃなかった。
「そんなの、エスパーか何かでもない限り分かるわけないよ。亜紀が気にすることじゃない」
「でも……あたし、この中でバクにいっぱいお世話になってるのに。知らなかったからって酷いこと言っていい理由にはならないと思うの。だから、ごめん」
バクは、自分の名前のことすら『死人の名前』って言ってた。
それは、バクが貘から抜け出すつもりがないから、現実の自分はもう死んだも同じだと思っているのか。
そして、こうして貘として生きていることは、死んでいるのと変わらないということだろうか。
バクが現実でどんな生活をしていたのか知らないから、分からない。
高校を一留したことも、サボったの? って尋ねたって『そんなとこかもね』だなんていう曖昧な答えしかくれなかった。
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