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「……ったくもう! なんでそーなるわけ!? もうあれでしょ、バクって絶対B型でしょ!」
「残念、A型でした」
そう言って肩を竦めると、バクはひらりと飛んで近くにあった『扉』の上に腰かけて足を組んだ。
妙な表現だけど、ここには無数の『扉』が浮いている。
壁などはなく扉だけがただ浮かんでいて、時折バクはそれを椅子代わりにしていたりする。
しかし今はまだ『昼』らしく、浮かぶ扉は少なかった。
「あーあ。なんでこんなのと二人っきりなんだろう。どうせだったらもっと素敵な人がよかったのに」
「そりゃこっちの台詞だよ。お見合いや婚約者よりタチが悪い」
吐き捨てるようにそう言ったバクは、さっきも言ったように外見だけ見ればあたしとはとても釣り合わないレベルの人だと思う。
だけど、こんな感じの中身だから、こっちから願い下げって感じだ。
だからたとえ男女で二人っきりだろうがそういう意識は全く起こらない。
それは向こうも同じだった。
「はぁ、来年から高校生、彼氏とか作って青春するぞーって矢先にコレなんだから、もぉ」
「ご愁傷様でした。……どうしても俺じゃ不満ってわけね?」
そう言ったバクはひらりと扉から降りてくると、あたしのすぐ目の前に立って見降ろしてくる。
薄く笑ったその表情に、まるで時が止まったかのような錯覚をおぼえた。
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