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射抜くような、金色の瞳。
これに真っ直ぐ見つめられるのが、実はちょっと苦手だったりする。
中身がこんなやつだって分かってても、そういう感情がお互いにないって分かっていても、やっぱりどうしてもどきりとしてしまうから。
「やっ……いや、あの、バクが本当は優しいの知ってるし、現にあたしがこうして貘って形ででも生きていられるのはバクのおかげだし、でも、えっと……」
思わず目を逸らしたあたしがそうやって慌てると、くすくすと声をあげて笑いだした。
バクの顔を再び見上げると、口元を抑えておかしそうに笑いを堪えている。
――ああもう。やっぱからかってたのか。
「っくく……何、そんな焦っちゃってんの?」
「んなっ……ちょ、ほんっと酷すぎんですけど! あーあーやっぱりバクみたいなのじゃダメ! もっと優しくて紳士的な人だったらよかったのに!」
憤慨したあたしを見て、バクは少し落ち着いた。
それから一見穏やかな笑みを浮かべたままで、こっちを真っ直ぐ見据えながらなんでもないことのようにこう言ってのける。
「そうだね。俺も亜紀みたいなのはゴメンかな」
バクが、あたしの名前を呼ぶことはめったにない。
大抵、『君』って呼ばれちゃう。
どうして今わざわざバクがあたしの名前を呼んだのかはわからないけど、それでふと思い出した。
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