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ならばこうだ。
あたしは、ずっとあえて聞かないでいたことを尋ねてやろうと思って口を開いた。
「バク自身のことを殆ど教える気がないってことはわかったよ。ひとつ教えてほしいんだけど、バクっていつから『貘』なの……?」
バクの無表情が一瞬だけ揺らぐ。
ふいっと目を逸らして、なにか考え込んでいるようだった。
「それも分からないから教えようがないね。なにぶんここじゃ時間がわからない。たぶん2,3年ちょっとだと思うけど」
そうして返ってきたのは曖昧な返事。
だけど、これはバクとしては真面目に応じてくれたんだと思う。
さっきあたしが『昼』だと思ったのは、『扉』が少ないからだ。
これらの扉は夢の中に繋がっており、現実で誰かが眠りにつけば扉が現れ、夢を見始めれば鍵が開く。
だから、夜と昼では数が全然違う。
夢の狭間はただひたすらに黒くてぼやぼやしたものが辺りを満たしていて、淡く光る扉だけが浮かぶ、それ以外はなにもない空間だ。
扉の増減以外に、外ではいまどれくらいの時刻なのかを知る術がない。
「あたしが来たのは2010年だよ。バクが来た時の年が分かれば、具体的にわかるんじゃないかな」
「……ああ、じゃあ4年だ」
なんでもないことのように、バクは答えた。
つまり、2006年にバクは貘になったっていうことらしい。
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