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「大樹のお願いを理由なしに断ったことあった?」
笑いながら言うと、少し考えた大樹が
「ない」
ようやく表情をゆるめて笑いかけてくれた。
でも、こうなったらこのお昼休みは大樹が私から離れないだろうということぐらいは分かる。
ノルマはノルマ。
それでも私はこの本を読んでしまいたい。
読まなくてはいけないし、読みたい本だから。
「遥ーはーるーかー」
読ませてもらえないとは分かっていて、読むことを諦める気持ちの準備も出来ている。
だけど名前を呼ばれるのが好きだから、甘えたように呼ばれるのも好きだから、頭に入らないのに本を読んでいるフリをする。
「はーるーかー」
3度目で本を閉じて正面の大樹を見た。
拗ねた様子に笑いがこみあげてくる。
「なんで笑ってんの」
ますます拗ねる大樹の言葉に、机の下で上履きの先と先をくっつけた。
「後で」
囁くように大樹に言うと、大樹がパッと照れ臭そうに笑う。
「うん、後で」
機嫌の直った大樹が今度は私に囁いた。
「図書部の用事がすんだら大樹が終わるの待ってるから。もし大樹が先に終わったらメールしてくれる?」
あと一押し、とお願いしてみたら
「分かった」
笑顔を向けてくれた。
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