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無言で宿題を写す彼の方は、絶対に見ない。
イヤホンを外した方の耳が、彼のシャーペンの音を拾う。
「ありがとう」
貸したノートやプリントが返される。
大体いつも8時くらい。
写し終わると、彼が隣の席から自分の席に戻る。
始業は8時50分。
これから彼の睡眠時間だ。
日本史のプリントを仕上げて、答えをメモに写し、もう片方の耳からもイヤホンを外して、音をたてないように席を立つ。
足音を殺して、そっと彼の席に近付く。
机にうつ伏せになっている彼の肘の下にそっと差し込んだ。
声はかけない。
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