1人目 未知との遭遇

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「ええ、花の種類や花色は違いますがいずれの例も『女性にモテ出す』という共通点があるようなんですよ」 医学とは離れた症状に、俺は「はあ」と返すしかない。 「ニューヨークの一般男性は、黄色い花を咲かせたようですが、突如セレブな女性にモテだしたり」 彼は手元の資料をぱらぱらと捲る。 「日本の男性の例もありますね。清純な女性から沢山言い寄られたとあります。その数100人程にのぼったとか」 ……なんだか、よく雑誌のグラビアの裏あたりに出てくる幸運のブレスレットみたいな話しになってきた。 「疑ってますね?」 「ええ。そんなエロゲみたいな展開はにわかに信じられなくて」 彼は体を仰け反り、外に響き渡るような声で笑った。 「とにかくあなたと同じ症状の20件の前例があり、科学的には解明されていませんがその花には女性を寄せ付けるフェロモンを高濃度で分泌するようです」 「……」 「それも、この特殊なフェロモンにより周りの女性の性格が患者さん好みに変わったり、元あった性格や能力を引き出すという効果が上がっています」 彼は小声で続けた。 「香水メーカーが極秘に動いているという噂もあるほどに注目されているんですよ」 医者は親指と人差し指で輪を作った。
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