105人が本棚に入れています
本棚に追加
刃物を持った見ず知らずの彼女は、意図しない台詞にきょとんとする。
その愛の重さ故に盲目となった瞳は光を取り戻す。
「あの……あたしが、まとも?」
「うん」
「……あの、あたし、今あなたを殺してあたしだけのものにしようとしているんですよ?」
そこらへんの自覚があることにもホッとする。
「うん。で君のお名前は?」
「刃渡サキと申します」
彼女は包丁を持つ手ともう一方の手で制服のホコリを軽く払った。
俺はポケットに入るメモを取り出し、彼女の特徴とその武器を簡単に書き出す。
ーー刃渡サキ。正統派ヤンデレ。武器包丁。殺して自分の物にしようと迫る。割と普通。
コッチ系の遭遇対策の為に、このメモは命の次に重要なものだ。
「ホント、ここまで常識的な女性に会うのは久しぶりだよ」
俺の絶賛に、彼女は顔を赤らめた。
「そんな///」
「で、刃渡さん」
俺は顔を上げ、メモをパタリ閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!