僕とちいさな街

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ある日の朝起きたら、僕の街は小さくなっていました。 いや、正しく言うと僕が大きくなってたのかもしれません。 僕の家だけはそのままの大きさの普通の家で、僕は小さいのですが、僕の家の外はもうみんなてのひらに乗るくらい小さいのです。 僕の身長でも海が見えます。水平線は緩やかな弧を描き太陽にきらきらと輝いています。 またむかしどこかで見たジオラマの街のような街の隙間を小さな黒い固まりがざわりざわり歩いています。僕はあれがヒトだと気づくまで数日かかりました。 富士山も小さくて、世界で一番おおきな場所が僕の家です。たまに僕の家の隙間から誰かが入り込んで探検しています。 ちょろちょろ歩き回る彼等を傷つけないように暮らすのも大変です。 僕はおおきいので、家から出るとみんなにじろじろ見られます。また肌をよじ登られてとてもむず痒いので、たまに手で軽く払ったりしてます。 ところで僕がおおきくなってしまった日から、僕のお母さんが見つかりません。
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