2人が本棚に入れています
本棚に追加
小さなピュアハート
毎日が相変わらず平凡に過ぎて行く…
彼は、30歳を越え落ち着きを得たせいか、日常の生活にあまり刺激を感じなくなっていた。
ホテルのレストランで責任を持つ立場に出世し、経済的に少しはゆとりが出来たものの、恋人もいない生活は、退屈と言えた。
夏の季節は、観光シーズンでもあり、忙しい日々が続く。
マナーの良くない宿泊客の相手をし、後片付けに時間を費やし、帰宅は深夜になることもある。
そんな日々が淡々と続く…
ある夜のこと…レストランの入り口から真っ直ぐに続く廊下を、可愛らしい女の子が、スキップん踏みながらやって来る。
まるで小さな天使…8歳くらいだろうか。
「うわぁ!!」
はじめて垣間見る、ディナーバイキングの迫力に、女の子の目は輝き、夢のような世界に感激している。
並んだ料理の数々を愛でながら、彼女の心は、キラキラと高鳴っている。
大きな深呼吸をつくと、彼に言葉を投げる。
「ねぇ…、これ全部食べていいの」
バイキングとはそういうものだ。
「いいよ」
「えぇ!!全部食べていいんだ」
側に立つ、従業員の彼に向けた笑顔は、全てを癒してくれる。
明日も頑張ろうと、彼は心で呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!