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――どうして、こんな事になってしまったんだ。
こんな事になるんだったらいつも通りさっさと家に帰ればよかったのだ。
林の中を走る、ただひたすら走る。
背後から迫り来る恐怖から。
振り返ってる暇なんてない、振り返ればきっと。
……きっと、殺される。
「――っ」
まるで鼓膜が破れんばかりに背後から響いてくる甲高い鳴き声に思わず両手で耳を塞いで立ち止まる。
糞ったれ、頭の中までガンガン響いてくる……。
立ち止まってる暇なんてない、走れっ、走るんだ羽柴慶【ハシバケイ】っ!
自分に渇を入れて薄暗い雑木林を再び走り出す。
もう日も暮れ始めているのだろう、薄暗いのはきっと雑木林の中だからだけでは無い筈だ。
……爺ちゃん、怒るだろうな。
いやいや、今日買って来たアレを見せれば骨董品には目がない爺ちゃんの事だから門限に遅れた事だってきっと多目に見て
――あっ。
と思った時には宙を浮いていた。用な気がしただけなのだろう、実際には石に躓いて盛大にヘッドスライディング、ホームイン状態、分かりやすくいうと全速力で走る勢いそのまま顔からこけたという事だ。
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