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刀を蜘蛛に向ける。
効果があるとは思えない、けどこのまま食われて死ぬだなんてまっぴらごめんだ。
「この化け物が――」
刀を振りかぶるがしっかり腰は地面に着いている、足が動かないからしょうがない。
蜘蛛は刀をその視界に入れても何の躊躇もしない、そのまま口を大きく開け――
……ここまでか。
諦めかけたその瞬間、閃光の如く眩い光が目の前を駆け抜け、一陣の風が吹いた。
「――っ」
思わず目を瞑る。
……一体何が起こった?
俺、食われてないよな。
恐る恐る目を開けてみる。
遥か向こうに亀がひっくり返った時のように足掻いている蜘蛛、そして目の前には真紅のドレスを着た小さな少女……。
――ドレスを着た少女!?
腰まで伸びた朱色の艶のある髪、睫毛の長い大きく見開かれた瞳、そして覗き見える八重歯……。
「――宗三左文字を使い私を現世に召還したのはお前か?」
どこから現れたのかまるで小悪魔とも言うべき容姿の少女がそこにいた。
「答えろ、話を聞いて――」
少女の言葉を掻き消しあの甲高い鳴き声が響いてくる。
視線をやると自力で起き上がったのかあの蜘蛛がこちらに走ってきていた。
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