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「話は後だ坊主、あの妖を消す、下がっていろ」
おいおいおい、待て待てっ、話の展開に付いていけない、あやかし?あの巨大な蜘蛛の事か、一体どこから出てきたのかは分からんがあんな小さな女の子にボロっちい刀一本で何が――
ってあの女俺の刀いつの間に取りやがった!?
少女はその細い両腕で刀を握りしめ、真紅のドレスを翻し蜘蛛へと一直線に――まるで疾風のように駆けていく。
否、比喩等ではなくそれは正しく疾風だ。
動きが到底人間のそれとは思えない、早すぎる――
体が宙に舞う、まるで踊っているかのよう。
例えるならばそれはきっと真紅のドレスを着た少女が刀で魅せる独りきりのステージ。
――繊細で、流麗。
両の眼が彼女の舞に釘付けにさせられる。
幼い容姿、低い背丈、細い体付きの少女からは想像もつかない動き……、しかし。
――綺麗だ、と。
心の底からそう思った。
俺は息をつくのも忘れただただ華麗に、けれど殆ど人間離れした動きで刀を振るう彼女の美しい姿に見とれていた……。
*****
「おい坊主」
――はっ。
彼女の声で我に帰った。
目の前にはあれだけの動きをした後で汗一つない彼女、向こうには息絶えたのかぴくりとも動かない巨大な蜘蛛。
ぼーっとしていた、不覚にも見とれて、いや見惚れてしまっていた。
「もう一度聞く、宗三左文字を触媒に私を現世に召還したのはお前か?」
……そうざさもんじ?しょくばい?げんせ?
「すまない、お前は一体何を言ってるんだ?そもそも――」
「何度も同じ事を言わせるなっ、そして私に向かってお前とは何様だこの阿呆がっ」
グーで拳骨をくらった。
嬉しいだなんて微塵も思ってはいないし念の為に言っておくが俺はマゾシストではない。
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