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彼女はその手の刀を俺の喉に向ける。まさに寸止め、少しでも動けばその切っ先が一瞬にして喉を切り裂ける距離――。
首筋に生温い汗がたらりと流れていく。
しかし何てとんでも無い性格の女だ、可愛いらしいのは容姿だけじゃないか。
「……質問の意味が未だに良く分からないが俺じゃない。確かに刀を持っていたのは俺だけど召還だなんてそんな怪しげな事をした覚えはない」
乾いた唇と喉で精一杯の返答をする。
「私は嘘が何より嫌いだ、己の心に誓ってそれは真実だと言えるか坊主」
「当たり前だ、俺はやってない」
やってないどころか出来ない。
ついでに言わせてもらうと坊主でもない、男にしてはむしろ髪は長いくらいだ。
そう言うと彼女はやっと刀を下ろしてくれる。
今日は何かと危険な目に合ってばかりだ、きっと厄日とやらに違いない。
「――君は一体何者なんだ、一体どこからどうやって現れた?」
今までずっと疑問になっていた事を彼女にぶつけてみる。
向こうも質問してきたんだ、こっちにも質問する権利くらいは
「答える必要は無い、本来なら貴様のようなひ弱な男となど口も聞きたくは無い……、だがこの左文字を再び我が手に戻してくれた事には感謝する」
どうやらひ弱な男には質問する権利なんて無かったらしい、草食系男子万歳。
彼女は俺に背を向け空を見上げる。
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