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薄暗い部屋だった。
しかも、妙に広い。
何かの訓練場?
と思う間もなく、強烈な殺気が吹きつけてくる。
斬撃は右から来た。
マジかよ。深淵め。
考える暇はない。
二回・三回転がってかろうじて躱す。
このままじゃあ殺られる。
俺は桜牙の力を発動した。
キイン甲高い音を立て、俺は斬撃を受け止めた。
しかし俺の防御を切り崩すかのように四方八方から斬撃がくりだされた。
ハッキリ言って、この腕の延長のように扱える軽く丈夫な桜牙刀でなければどうにもならなかっただろう。
恐るべき使い手だった。
「そこまで。」
重い声がかかって俺はようやく斬撃の嵐から解放された。
「済まなかったな。」
深淵が近づいてくる。
「俺を片付ける算段じゃなくてよかったぜ」
言ったが俺はまだ警戒を解いていない。
少々の事なら切り抜ける自信はあったが、
さっきの斬撃の主。
あいつはやべえ。
その主は刀をダラリと下げて、こちらを見ている。
美しいブロンドが揺れていた。
見た顔だ。
あの鬼を切った現場で会った女だ。
間違いない。
女は未だ殺気をたたえた瞳でこちらを見ていた。
「おお怖ええ。」
俺は軽く首をすくめた。
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