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「乗神来るぞ。」
イヤホンから深淵の声ががなり立てる。
わかってる。
鬼の気配はビンビン伝わって来る。
俺は人波を縫うように歩いている。
気配は三つ。
まず一つ。
俺の目の前にいるおっさんの身体が膨れ上がる。
まあ周りの人間にはそうは見えていないが
俺は桜牙の力を集約した右手ですれ違いざま、おっさんの首筋をなぐ。
ゴッと重い音と手応えを残して、
鬼に変わりかけたおっさんは力なく崩れ落ちた。
次だ。
奴はもう鬼に変わっていた。
怒りを孕んだ目で俺を睨めつける。
奴は咆哮と共に周りの人間を弾きとばす。
マズイな。人目が集まった。
仕方ない。
俺は右手に集約した力を奴に向って放つ。
見えない力は確実に奴の眉間にヒットし、
奴もまたクタクタと崩れ落ちた。
「よし確保だ。」
深淵が下っぱの警官に指示を下す声がした
警官達が人波をかき分け走って来る。
俺は最後の一人に意識を集中する。
気配は遠ざかって行く。
逃げる気か?
俺は鬼を追って人波を抜けた。
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