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俺は鬼を追って路地から路地へと駆け抜ける。
気配が止まった。
最後の路地を曲がると、そこに
鮮血の花が咲いていた。
丁度セレーネが血刀を鞘に収めたところだった。
セレーネは俺に冷たい一瞥を向け、
踵を返した。
「ちょっと待てよ。」
俺はセレーネを追う。
「何かしら?」
視線をくれる事すらなく、面倒そうな答
「何故斬った?」
「鬼だからよ。」
俺は頭に血が昇るのを感じた。
「奴はまだ人を殺めていない。
斬り捨てる必要はなかった。」
セレーネは足を止め、俺を見た。
「同じ事。あなたが逃がしてたらそうなったでしょう?
私はただそんな鬼を斬るだけ。」
その瞳は暗く燃え、
まるで俺をも斬ると言わんばかりだ。
なら尚更引けない。
「乗神~お疲れ~。」
深淵の能天気な声が緊張感に割って入る
気を削がれ思うはセレーネの背中を黙って見送った。
5時になっていた。
「定時だ。俺も帰らせてもらうぜ。」
俺はムカつく気分を胸の奥に押し込め、
家路についた。
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