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平穏な休日。
俺は子供達を連れ公園へ来ていた。
俺は元気に遊ぶ子供達を見ながら、
ぼんやり考えていた。
鬼の事。
奴らは見えないが、常にそこらにいる。
人の心の闇に取り憑いて力をふるうのだ
ならば桜牙は?
俺にも確かに闇はある。
だから俺も取り憑かれたのか?
俺もいつしか衝動のままに破壊と殺戮を繰り返す鬼になるのだろうか?
わからんな。
しかし、もし、
そうなったら。
セレーネが止めるだろう。
俺は暗く燃える瞳を思い出した。
そうなるわけにはいかないな。
俺は子供達を見ながら思う。
まだ死ねん。
いつしか夕陽が大きく傾いていた。
「帰るよー。ご飯しよ。」
俺は思考を打ち切り、立ちあがった。
辺りの子供達も皆親子連れだち帰り始めていた。
あの子。
一人佇む少年。
寺岡哲と言ったか?
小学校で俺が助けた子。
俺は歩みより声をかけた。
「帰らないのか?」
晢はこっちを見た。
「うん。」
「誰か家で待ってるんじゃないのか?」
俺は鬼に変わりかけた母親の事を思い出していた。
「誰もいないよ。ママはずっと病院。
パパは滅多に帰ってこないんだ。」
俺は心が痛んだ。
おそらくこの子の母親も闇を抱えていたのだろう。
「じゃあ、おっちゃんとこで一緒にご飯食べよう。それならどうだ?」
晢は驚いたように俺を見上げる。
「いいの?」
おずおずとした声で聞く。
「いいよな。紫苑。」
俺は集まった子供達に振った。
「いいよ。やった~。」
子供達は無邪気に喜んでいる。
「じゃあみんな家まで競争。」
俺の号令に応え、
子供達は駆け出した。
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