3人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は晢の父親に電話をかけた。
しばしの呼び出し音の後、
「はい寺岡です。」
思ったよりも若い声が出た。
「私乗神と申します。
晢君の同級生の父親ですが、
晢君のことで少しお話ししたいのですが」
とたんに電話の向こうで息を飲む気配がした。
「晢がどうかしましたか?」
「いえ誰も晢君の世話をされていないようなのですが?」
「それが何か関係あるんですか?」
電話の向こうの声が尖る。
「大アリです。彼は今ウチで飯食ってますから。」
「・・・。」
「もしこのままなら、しかるべき行政機関に連絡する事になりますが。」
俺は少し脅しをいれた。
「なら勝手にして下さい。私にはもうあの鬼の子の面倒は見れません。」
電話は切れた。
俺はしばし呆然とした。
こんなにあっさり自分の子を捨てられるものなのか?
俺はいなくなった妻を思い出していた。
「おっちゃん。僕はどうしたらいいの?」
心配するな。
「好きなだけウチにいたらいい。
俺がなんとかしてやる。」
晢は初めて安心したような顔をした。
最初のコメントを投稿しよう!