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日本時間にすると午後10時。
その頃、俺は風呂から上がったばかりで気まぐれに点けたテレビが沖縄や関東の台風被害による、ニュース番組だった。
台風15号、16号の被害は甚大で、ちょうどニュースに見入っていたところで、急に画面が切り替わった。
燃え上がるビル。空へと伸びる黒煙。
アナウンサーは次々と起こる惨劇を報道する中で「信じられないような映像をご覧いたただいていますけれど、これは現実の映像です」との発言を繰り返し、その言葉だけがやけに印象的で、今も耳から離れない。
この状況を神はどのように見ているのだろうと考えた。
きっとただ傍観しているだけ。
人の業――それが及ぼす人間同士が行った過ちと復讐の連鎖。
勿論、そこに神の慈悲など一欠けらも存在しない。
わかっていた。
所詮、神の存在など、そんなものだと……
当時のアナウンサーも言っていたが『これが現実』なのだ。
このまま灰になればいい。
こんな不条理な世の中。
大切な人を失う悲しみ。変わる世界の色。呪縛から逃れられず、一生引きずっていく面影。
本当に……
本当に嫌な世界だ。
途中短い橋に差し掛かる。
そこで見知った女性の横顔を目にした。
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