seen.1~日常~

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からかわれても嫌な気分一つしないのは、友李の人柄ゆえなのかもしれない。 決して自分を偉ぶることなく、分け隔てもない。誰にでも気さくで優しい。 友李はそういうやつなのだ。 「淳也君こそ大丈夫?いつもより――というか、いつも以上に顔色良くないみたいだけど……」 「そうか?……別になんともねぇよ」 俺は普段と変わらない表情だと思っていたから、それは意外だった。 他人にはそう映るのだろうか。 自分ではわからない。 思い返せば今朝の悪夢はいつも以上にリアルだった。 いつもなら夢は事故に遭い、四季の姿が遠くにぼやけて見えるところでぷつりと切れるのだが、今朝のは違う。 その先も見てしまった。 焦げついたオイルの臭い。ぬるっとした鉄の臭い。咥内の違和感。変な味。そして血の水溜まり。 凄くリアルな感覚が、今だ脳裏に染み付いている。 思い出すとまた胸やけのような倦怠感が胃を圧迫くしたので、思考はそこで止めた。 友李がいつも以上に、と言い直したことについては、そんな疑問を感じなかった。 朝、俺の顔色はあまり良くないらしい。 こっちに住み始めてからよく指摘されるようになった。 心配そうに、大丈夫?と、言われないことのほうが少ないくらいだ。 自分の顔にそんな興味もないからか俺自身、顔色の変化にあまり気付くこともない。 しかし、原因くらいはなんとなくわかっていた。 気遣ってくる友李と2人、ようやく歩き出す。 ガラス張りで開放感のある造り。最近では補強工事も入り、ペンキも白に塗り変えられた外観真新しい校舎。 千羽美術専門学校。 俺と友李はここの学生。
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