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海へ続く1本の海岸線。どこにでもあるような、見渡しのいい交差点。
何度も走った道なのに。
何度も通った道なのに。
強い衝撃。
回る世界。
轟音と悲鳴。
一体なにが起こったのだろう……
蒸暑い太陽の下、潮風がなんとも心地いい午後3時。
いつもと変わらない蒼空が、俺達を見下ろしていた。
ただ……
あいつに見せてやりたかった。
俺だけの穴場のスポット。
これからは俺達2人の穴場のスポットになるはずだった。
俺はバイクを飛ばした。あいつの喜ぶ顔が早く見たかったから。
そしてその時に言おう。
そう決めていた言葉。
一瞬の出来事だった。
衝撃の後、強引にバイクから投げ出された俺は、景色が回転したのち、固いところに全身を強く打ちつけた。
おそらくコンクリート。
そこから先は、なにが起こったかも分からないまま、意識だけが薄れていく。
痛みよりも全身に走る熱さが勝っていた。
ブラウン管からもう1つの違う世界を覗いているかのようだった。
ぼやけて見えるのは、あいつの姿。
ぴくりとも動かない、あいつの姿。
今にも霞みゆく意識の中、俺はあいつの名前を呼んだ。
四季(しき)――――
正確には口から発することは出来ず、心の呟きのように呼び掛けていた。
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