seen.1~日常~

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――淳ちゃん……―― 勢いよくベッドから起き上がる。 気付いたら荒い息を吐きながら、肩を揺らしていた。 暫くして、はっとした表情で辺りを見回す。 確かに、聞こえた気がした。四季が俺の名前を呼ぶ声。 幼かったあの頃を思い出させるような。あどけない声が耳に残る。 俺は一瞬、夢か現実かの区別すらつかずにいたが、それが夢だったと理解するのに、そんな時間はかからなかった。 カーテンの締まり切った薄暗い部屋の中、僅かな隙間から朝を告げる光が漏れ、それに反射して光る棚の上の腕時計。 ガラス板のひび割れた腕時計は、午後3時を指したまま止まっていた。 俺の時間だけが、停まってしまったかのような感覚。 暫く、その腕時計を悲しげに見つめていた。 白で綺麗に統一された2DKの部屋は、たった独りの住人に対して、沈黙を保ったまま。 急な孤独感。胸をえぐられるような不安。喉の奥からせりあがってくる悲痛。悲しみ―――― 開放感のある造りは、俺の感情をまるごと置き去りにする。 早く過ぎてほしかった。 この気持ちを早く連れ去ってもらいたかった。 もう嫌だ。 早く…… 早く過ぎろ。 こんな苦しみはもう嫌だ。 無くなれ…… 無くなってしまえ。 死んでしまう―― 死んでしまいたい。 苦しみに顔を歪ませながら耐える。 胸元を自分でも驚くくらい強い力で押さえつけたまま、ひたすら耐える。 過ぎ去るのをただ耐える。耐え続ける。 俺の気持ちとは裏腹に、外では元気よく鶺鴒(セキレイ)が鳴いている。 呼吸が本来のリズムに戻る頃、俺はようやく落ち着きを取り戻すことができた。 カーテンの隙間から覗く光りの方に目を向けると、思わず余りの眩しさに目を伏せた。
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