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情けない。本当に。
俺は学校に行く支度を済ませると、染み付いた習慣でトーストを焼く。焼いたトーストを平らげ、ミルクティーを煽ると外に出た。
しっかりと鍵をかけた後、すぐ目に飛び込んで来たのは、朝のラッシュにはまる渋滞の列。
家の真ん前がこう混雑してるのは、勘弁してほしいものである。
しかも広い道路への抜け道がここにしかないため、毎日毎日この狭い道路は車の列で埋め尽されるのだ。
これも朝のうちだけなんだろうが、見ていると永遠に続くメビウスのようで、こっちまで気が滅入るからたまらない。
アパートの駐輪場にある自転車にまたがると、ふと空を見上げた。
何処までも澄んだ青は空全体を埋め尽していて、黒くなっていた心さえも少しずつ、癒してくれる要素の一つにも思えた。
時折頬を霞める暖かい風が、俺の気持ちを軽くさせる。
だが…………
すぐにそれもモノクロームに変わるだろう。
自分にはわかるのだ。世界には色が無いということを。
大切なものを失うことで。知ってしまったから……
なにも変わらない空。
なにも変わらない色。
なにも変わらない日常。
そしていつものように思う。
俺は今日もなんの為に生きていこうというのか。
なぜ、自分だけが生き続けているのだろうか……と。
【混色の銀夏】
seen.one―every day
the world that faded……
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