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俺は「よしっ」と一言で闇を振り払い、学校へ向け軽く自転車をこぎだした。
気持ちの切り替えは、いつもその一言で区切りをつけることにしている。
こうも澄んだ青空を見ていると、勇気づけられている気がするのだ。
だから晴れた日の空は、好きだ。
逆に曇りや雨は好きじゃない。
余りいい思い出はないし、憂鬱な気分に更なる加重が加わるからだ。
風に乗った車の排気ガスの臭いと、騒音にまみれ通うこの川沿いの道。もう何度も往復した。
時折、遅刻を意識してか、高校生が颯爽とした速さで俺の横をすり抜けて行く姿を見かける。
これもまたいつもの光景。
少し羨ましい目で追いながら思う。
8月でちょうど21歳。
よく20歳からは歳が経つのが早いと言われるが、確かにそれは当たっているのだろう。
若い頃には余り感じたことのない違和感。
つい最近まで高校生だったかのような――変な錯覚にたまに捕われてしまうからだ。
早いものだ。時が経つのって。
心はまだまだ10代なのにな。
振り返ってみると、社会や世界では去年、様々なことがあった。
日本では新たな政権の誕生。
そして、なにより世界中の人が永久に胸の中に刻まれることとなった事件――アメリカ同時多発テロ。
「9.11テロ」だ。
世界的に有名なニューヨーク世界貿易センタービル--通称「ツインタワー」という、でかいビルに2機の旅客機が高速で突っ込むという異常事態が起こったのだ。
勿論、ただの事故ではない。
それだけで済むなら単なる不幸な事故として片付けられるのだろうが、真実はあまりにも非情で、人々を脅かす凶器として植え付けることとなる。
過激派国際テロ組織アルカイーダによる報復テロ。
アメリカ本土があれほどの攻撃を受けたのは建国史上、初めてのことらしい。
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