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ルナの白い身体は闇夜の黒に染められ、すぐにどこかも分からなくなる。
時計は六時を示していた。
待ち合わせ時間まで残り一時間。
ロキは行動する機会を伺っていた。
「あの……」
「何だ?」
ハジは窓を閉めるとロキに振り返る。
そこでは鎖に繋がれたロキには届かない距離だ。
だが、ハジたちと共に旅をする中で常に気弱な風を見せている。
今さら逃げるなんて思っていないのか、油断するときが多くあるのだ。
比較的過ごす時間が多いハジはその傾向が強い。
その油断を逆に利用しない手はなかった。
「よくこの町には来るんですか?」
「あぁ。
大きい町だからな。
盗んだ物はここで売りさばく。」
機嫌が良いのかハジは普段よりも饒舌になっている。
ロキはホッと胸を撫で下ろし、さらに会話を続けていった。
「人が多いように思ったんですが、お祭りでもあるんですか?」
「今夜は月に一回の市だからな。
買い手が集まってるんだろ」
ハジは窓の外を眺める。
窓の外はイルミネーションに彩られ、はしゃぐ子供たちが走って行くのが見えた。
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