第0章 修学旅行

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―遡ること約30分前。 木ノ上陽楽は弱めの冷房が効いた土産屋の中を物色していた。 あくまで物色。 買い物をする気はない。 八つ橋の種類の多さに驚いていたところをトイレから戻ってきた神田大毅が話しかけてきた。 「胡麻餡は許せるけど、さすがに…」 「メロンとイチゴはないよな…」 全く同意見だとばかり頷く大毅はメロン味の八つ橋の表示を見る。 「こやつ、もはやメロンではない」 かき氷のシロップ的な… と言いかけた所で止めた。 正確に言うと、言いたかったけれど言えなかった。 何故なら肩を叩かれたからである。 普通に考えたら班員だったり、あるいは教員だったりが声をかけてきたと思うのだけれども、 振り向いた時に俺の浅はかな考え―(良く考えたら振り向くまでの短時間でここまで考えたのだから、決して浅はかではないと思う)は吹き飛んだ。 全くもって教員やら班員という要素は無添加だった。 ついでにメロン味の八つ橋が一切合切、無添加だったら相当たかい、いやあれは添加物だから美味いのか、などいらない考えが脳裏をよぎった。 囲まれていた。 視線が危ない人たちだった。 俺が絡まれる訳がない、 自分には絡まれる理由がない。 が、悲しいことに、残念なことに理由がはっきりと分かっていた。 分かり過ぎていた。 生まれてくる世代が少し違う、とツッコミたくなるような出で立ちをしたリーダー格の好青年?が肩を組ながら話しかけてくる。 「金髪の兄ちゃんさぁ、そっちの兄ちゃんもだけどよぉ、今金欠なんだよねぇ」 こっちも金がない、よりも妹属性はないとツッコミたかった、全力で。 「マジ金ねぇんだわ、あと顔ちけーよ気持ちわるい」 まさかとは思う、そっちサイドの人かよ、と思うような口の悪さで対応して火にガソリンを注いだ今は親友と呼びたくない悪友の神田大毅は鬱陶しそうに肩にかけられた手を払った。 「やんのかよ、あ゛?」 とリーダー様が(一番手だから鉄砲玉かも)ガンをつけてきた。 「ここじゃ迷惑だろ、路地裏行こうぜ」 今更だけど、神田大毅は金髪だ。 理由はハーフ、イギリス人の母をもつ正真正銘の混じりっ毛なし否混じりっけなしの金髪。 それと冒頭の路地裏の怒号はこれから起こる。
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