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「あ、ビーチボール忘れた」 虎南達の所へ着くなり虎南がそう言って、「まーくん。いってらっしゃい」とパラソルの方を指差し俺に有加が命令して、「私行きますよ」とかなが言ったから、「いや、俺が行くから」と答える。 パラソルの所まで、また走り始める。 少ししてから後ろのほうから「あと三十秒ー」とかなんとか声が聞こえる。 いや、三十秒は無理だろ、なんて思いながらも更に加速する。 砂に足がとられて思うように進まない。でも楽しい。 やっぱり、夏は好きだ。暑いし、汗もかくけど、好きだ。 ビーチボールをぶつけられ、後ろから押されて全身びしょ濡れで。 お腹が空いた、と焼きそばを食べて。 そしてまたビーチボールをぶつけられ。 そうしていたら、西へ西へと太陽は進み、あたりがだんだんオレンジ色へと変わる。 すっかり遊びつかれた俺達は、四人並んで座っている。 だらしなく伸ばした足に、時折波が触れる。 手も足も服も砂まみれで、くすぐったいような、痛いような。 ふくらはぎはパンパンで、できたらこのまま動きたくない。 全身がだるくて、疲れていることを実感するけれど、大学やバイトの疲れとは、またちょっと違う。  
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