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言葉の代わりに響き渡るのは、くぐもった音と、微かな悲鳴。
「……皆まで言う必要はなくなったな」
その呟きは、鉄格子の向こうで蒼い顔をしながら呆然としている少女には聞こえなかった。少女の耳に入ったのは、慌ただしく階段を下りる音。
「ミリアちゃん!」
階段を駆け降りる音とともに、切羽詰まった声が地下牢に反響する。
「おじさん、今の音は!?」
「爆発、だろうね」
「まさか、採石場ですか?」
石材加工が主要産業の村であるが故、石材調達の際に爆発物を用いて巨大な石を発破することも多かった。ミリアの脳裏に過る推測を、おじさんは否定する。
「悲鳴が微かに聞こえた気がするよ。恐らくは、村の住宅地……」
その声に、「そうあって欲しくない」という思いが強く読み取れた。その思いは、二人共同じだった。
「行かなくていいのか!?」
「こういうのは、警備隊に任せるのが……」
おじさんの発言をミリアが遮る。
「ダメです!警備隊のほぼ全てが石切り場へと駆り出されている現状では、到着が遅れてしまいます。復旧作業に爆発物を使っていたら、最悪気づかないかもしれません」
「……補足するなら、悲鳴が爆発音より響くとは思えない。ここより向こうにある採石場まであの声が聞きとれるとは思えない」
二人の畳みかけるような論調に、中年の男も押し黙る他なかった。
「あたしが見に行きます」
そう言うだろうな、とその場の全員が考えていた。そしてすぐに、青年が声を荒げる。
「反対だな。オレがさっき言っただろ。キミは狙われている」
「じゃあ、どうしろっていうんですか?」
「オレが行く」
「あなたは不審者としてここにいるんですよ?」
ミリアと青年の主張は止まりそうもなかったが、ここで鶴の一声がかかる。
「二人で行けばいいよ。緊急事態だし、特例措置だよ。大丈夫、上にいるじいちゃんは家でなんとかしておくから」
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