115人が本棚に入れています
本棚に追加
/127ページ
8月9日
俺はある研究所に派遣された。
と言っても仕事内容は事前には教えてもらえず、ただその場所で働いてこいとの事だった。
お金に余裕の無い俺には少しでも働き口があるならありがたい話なので断りはしないが、事前に教えない事に疑心を抱いている。
「ここか…。」
白を基調にした外観。清潔感溢れる、というより少しでも汚せば捕まりかねないくらいにピカピカだ。
俺は警備室で待機している警備員に事情を説明し、職員の方を呼んでもらった。
「やぁ、こんにちは。君が今日から来る木下一馬-キノシタ カズマ-君だね?私はここの所長の松木と言うものだ。よろしくたのむ。」
軽く自己紹介を済ませ研究所内へと進んでいく。
皆白衣を着ていて、いかにも研究者といった中にスーツの俺は物凄く違和感があったが、まあ後程白衣を着るのだろう。あまり気にしないでおこう。
「木下君、こっちだよこっち。」
少しよそ見をしていると松木所長はエレベーターに乗り込んでいた。
俺が乗り込むと、彼は胸ポケットからカードを取り出した。それをエレベーター内のカードリーダーに差し込むと数字のついたボタンが現れた。
「おっと、間違えた。これは一般用のカードキーだったね。こっちだこっち。」
…一般用?カードキーに一般用なんてあるのか?ましてや研究所、一般人が立ち入るワケもなく、ただでさえ異質だというのに、まだ裏があると?
最初のコメントを投稿しよう!