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校庭の桜の木は咲き始めたばかりで、まだ肌寒い風が吹く事も多々あるものの、日が差し込む教室は担任の最後の挨拶を子守唄にするくらいポカポカと気持ちいい。 俺、相原 護(アイハラ マモル)。 身長170センチ(決してサバはよんでない)。 黒髪に漆黒の瞳。痩せてもなく太ってもなく。イケメンでもなく不細工でもなく。 工業高校に通う、ごく普通の高校二年生だ。 工業高校の生徒は、ほぼ男子。 学年に30名ほどしかいない女子は、運悪くこのクラスに一人もおらず、男子校並の男臭さを放っている。 だが、このクラスともお別れ。 明日から春休み。そして新学期には新しいクラスになり最後の高校生活を迎えようとしているところだ。 この季節の窓際の席って、なんでこんな気持ちいいんだろ… しかも1番後ろだし… 一瞬閉じかけた瞼が開かれたのは、隣りの席の生徒に声をかけられたからである。 「おい、相原。先生の話し終わったぞ?寝てただろ?」 ちょいちょい、と俺の頭を指でつついて笑っているのが、一年の頃から友達の、井坂 勇次(イサカ ユウジ)。 俺より10センチ以上高い身長と、バスケ部で鍛えられた身体は、「漢(オトコ)」そのもの。 茶色の短髪に、整った顔立ちも全てバランス良くて若干憎たらしいが、自慢の友達である。
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