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辺りは薄暗い自室。
さっき入ったばかりで、長年過ごしてきた自分の部屋だ。
わからない場所なはずがない。
そこに制服を着たまま(ネクタイは緩んでいる)の自分。
ふと、視線を感じて辺りを見回すとドアの前に男が立っていた。
それに驚いて思わず後退る。
「誰だ…?」
顔がぼんやりとしていて分からない。
でも、その体格からは明らかに男だと分かる。
背は、井坂くらいか…井坂より少し大きい。
だけど、驚きはしたものの、不思議と怖いとは思わなかった。
「…誰か、気になるか?譲殿」
男の声は、心地良い低い声だ。
やはり、聞いたことのない声だし、誰か検討もつかない。
気になるか?と言われれば、気にならない事もない。
「…俺を…知ってるのか?」
ゆっくりと自分に近づいてくる見知らぬ男が名前を呼んだ後、少しばかり警戒しながらそう問う。
俺と男の距離はすでに手を伸ばせば届く程度まで縮んでいた。
最も、部屋が広くないという理由でもあるけど…
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