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すると、<現実の世界>に戻ったらしく目が覚める。
ガバッとベッドから起き上がり、『現実』の世界に戻った俺は、鳴り続ける携帯の所在を探す。
鞄の中だ、と思い出しベッドから降りて鞄からそれを取り出す。
ディスプレイには『井坂』の文字。
何故だか無性にホッとして、少し声が震える。
「もしもし…?」
『あ、ごめん、寝てたよな?』
「…いや、寧ろちょっと夢見が悪かったから丁度よかった」
思わず本音を漏らしてしまう。夢の中の男を、怖いとは思わなかったが「現実と夢の境目」と聞いた時、現実の世界に戻れなくなったらどうしようか、と思ったからだ。
それが怖かった。
ただの『夢』なのに。
なんだか現実のように、男がここに居た感覚になって…
井坂が電話してくれた事にホントに感謝する。
『そうなのか?大丈夫?』
「あぁ、大丈夫。で、なんか用だった?」
『いや、涼がさ…』
『もしもーし、マモちゃん?大丈夫?なんかやっぱりマモちゃんの様子気になってさ、電話しちゃおってなって』
井坂の携帯を奪ったらしい才原が、明るい声で電話口に出る。
「あー、大丈夫だよ。心配してくれてサンキューな」
本当にこの二人は、俺の事を大事な友達だと、思ってくれている事が嬉しい。
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