24章§青い頃のラブアフェア

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女王――セシル・ヌンサムは、退屈そうに豪華な椅子の背もたれにもたれていた。 青く艶やかな髪は、高い位置で二つに結ばれ緩くカールさせている。 ドレスに付いているフリルが、彼女が動くごとに、微かに波打ち、チラリとパニエの裾が足元から見える。 ふと脳裏に過ぎるものがあり、セシルはピクリと目を動かす。 色褪せることはない。 姉の死を。 ギリッと唇を噛み、忌ま忌ましげに呟く。 「まぁ、いずれ殺しますわ」 傍らにいた兵士や召使達は、何事かと顔を見合わせた。 定例会で言われた【天使処罰命令】 それが"彼"の終わりを遠巻きながら、指していた。 「ふぁ~」 手を口元に当て、セシルは小さく欠伸をする。 黒い瞳の眦からは小さな雫が現れる。 「―――」 何かを呟こうとした刹那。 バリーン!! ガラスが割れた音がし、セシルは瞬時にそちらに目を配せると、ひとりの人物が誰かを庇うようにして、部屋に入ってくる光景が見えた。 白髪で長い髪、なのだろう。 彼はひとくくりにして結んでいた。 それがひらりと、舞う。 彼は床に倒れ込んだ。 やがて、 「いーててて……」 起き上がった彼の言葉を聞いた瞬間、セシルの身体が強張る。 ――この声は!! 「な、何をしてるんですの!?」 整理出来ないセシルの脳内から出た言葉は、実に一般的なものだった。
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