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女王――セシル・ヌンサムは、退屈そうに豪華な椅子の背もたれにもたれていた。
青く艶やかな髪は、高い位置で二つに結ばれ緩くカールさせている。
ドレスに付いているフリルが、彼女が動くごとに、微かに波打ち、チラリとパニエの裾が足元から見える。
ふと脳裏に過ぎるものがあり、セシルはピクリと目を動かす。
色褪せることはない。
姉の死を。
ギリッと唇を噛み、忌ま忌ましげに呟く。
「まぁ、いずれ殺しますわ」
傍らにいた兵士や召使達は、何事かと顔を見合わせた。
定例会で言われた【天使処罰命令】
それが"彼"の終わりを遠巻きながら、指していた。
「ふぁ~」
手を口元に当て、セシルは小さく欠伸をする。
黒い瞳の眦からは小さな雫が現れる。
「―――」
何かを呟こうとした刹那。
バリーン!!
ガラスが割れた音がし、セシルは瞬時にそちらに目を配せると、ひとりの人物が誰かを庇うようにして、部屋に入ってくる光景が見えた。
白髪で長い髪、なのだろう。
彼はひとくくりにして結んでいた。
それがひらりと、舞う。
彼は床に倒れ込んだ。
やがて、
「いーててて……」
起き上がった彼の言葉を聞いた瞬間、セシルの身体が強張る。
――この声は!!
「な、何をしてるんですの!?」
整理出来ないセシルの脳内から出た言葉は、実に一般的なものだった。
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