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ドアの向こうから気配は感じられない
それもそのはず
こんな夜遅く起きてる人などほとんどいないのだから
しかし私は何度も何度も呼び鈴を押し続けた
しばらくするとインターホンから寝ぼけた声が聞こえてくる
「…誰だ?こんな時間に」
「夜分申し訳ありません…雨本です。お金を返しに来ました」
「明日にしてくれ。何時だと思っている」
「申し訳ありませんが今じゃないといけないんです」
「…わかった、ロック解除する。さっさとしろ」
ドアノブから鍵が外れたであろう音がした
さすがは成金
鍵を外すのもボタン一つなのでしょう
「二階に上がってすぐの部屋だ。そこに来い。廊下を汚すなよ」
「わかりました」
ドアを開けると真っ暗でも分かるくらいの広い玄関が私を出迎えてくれた
階段の奥だけは明かりが見える
そこに心が汚れた人間がいるのです
私は靴もカッパも脱がずに玄関を越えてそこへ向かった
歩く度に廊下は靴底に詰まった泥によって汚れていく
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