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大都市の東京都市。
あんな街中で悪霊なんかが居たら何人か必ず感知するはずだ。
なのにっ………。
なのにっ………。
何故誰一人として気付かなかったんだ!?
何で俺なんだよっ!
「畜生っ。俺が一体全体お前に何をしたって言うんだよ!」
眉を寄せて後方から四つんばいで追い掛けてくる女の悪霊を見て叫ぶ。
狭い路地を抜け、広い空き地に出る。
――ダメだ。こんな所じゃ。
只でさえ、霊装が扱えないのに自ら追い込むようなことできるかよっ。
ここまで来るまでにどうすればいいのか死ぬほど必死に考えたが、やはりあそこに行くしかない。
って事は方角的にはこっちか!
空き地の砂利が2人…いや3人分の走る音をクリアにさせる。
目の前には高い金網。
あそこを越えるしかない。
『グボェ…ヴ…ャカバ』
ゾンビ映画に出て来そうな、気持ち悪い声。
そんな恐ろしいもんをバックにランニングって。
あり得ねぇよ、普通。
だけど、そんな事―――
「―――言ってられるかぁ!」
下半身に力を込め地面を蹴りあげる。
手を高く伸ばしてより高い位置で金網を掴み駆け上がりそこからまた飛び上がり、金網の僅かな出っ張りに手を掛け、身体を反転。
身体を仰け反らせ、半転して反対側に着地。
足が痛いなんて甘い事言ってられるかっ。
こっちは命掛かってるんだ!
着地した勢いでそのままダッシュ。
再び狭い路地に入り、そこを今までの人生最速の走りで抜けると、開いた所に飛び出た。
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