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―――一撃。
たったの一振り。
霊装が使えないにしたって、あんなに弾を打ち込んでも怯もうともしなかったあの化け物ような悪霊を何の術式無しで除霊してみせやがった。
俺は驚きを隠せぬままホルスターにエア・シャフトを収め、大鎌片手に立つ少女を見た。
滑らかな黒髪のボブカット、そして前髪から覗かせる端正な顔付き。
………………
あろうことにも俺は少女に一瞬見惚れてしまっていた。
白雪のような美しい柔肌。中学生を連想させるような童顔。
……うわっうわっ。
俺は初対面の女の子を何じろじろ見て観察なんかしてんだっ。
今はそんな状況じゃないだろっ。
頭をふるふる振って煩悩退散。
たるんだ顔を引き締める。
本題。
それは彼女が一体全体何者なのか?
それを問いただす為、俺は大鎌を携えた大和撫子な少女に話しかけたる。
とは言ってもまずは命を助けて貰った恩人だ。
お礼をきちんとするのがセオリーってもんだ。
「え~っと、さっきは助かったよ。本当にあり―――」
と俺の言葉を遮るように、俺に背を向けていた少女は口を開いた。
「お久し振りですっ――――」
ヒラッ。
身体を翻して俺の方へ向き直し、眩しい聖母のような笑顔を浮かべた。
「――高山 希様っ」
…………は?
惚けた表情のまま俺は硬直した。
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