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「…黒羽。」
「ころん様。…合否の結果ですね。」
黒羽は些か緊張している様だ。それもそうだろう、黒羽はころんの為だけに此処に居るのだから。
「…執事候補黒羽、貴方を正式な執事として私、ころんは契約を認めます。契約を望むのならば、跪いて私の手を取り忠誠を誓いなさい。」
ころんはすっと右手を差し出した。
黒羽は一歩下がると、跪きころんの手を両手で取った。
「不肖黒羽、貴方の執事となり、手足として働く事を望み、誓います。」
すると隣に居た執事候補達から、拍手が贈られた。ころんは黒羽を立たせると、受付へと歩き出した。黒羽はその後をついて行く。通る所で拍手が巻き起こる。先程のゴブリンの近くへ差し掛かると、祝いの言葉が掛けられた。
「おめでとうございやす、おめでとうございやす!あっしもウサギのお嬢様の所へ試験雇用が決まりまして…あぁ、めでてぇ日だ!おめでとうございやす!」
「そっちこそおめでとう!がっつりしっかり働いて、目に物見せてやりなさい!あたし、黒羽が帰ってから今日一日、手が回らなくなっちゃって。黒羽が居ないと駄目だなぁって。だから迎えに来たの。居なくなって後悔させたら、貴方の勝ちよ!」
「へい!ゴブリン族の誇りにかけても!」
黒羽は礼を述べ、ゴブリンと固い握手を交わした。
「どうか良いご主人様に巡り逢えます様に。不吉な鴉から細やかな祈りを。」
「ありがとうごぜぇやす。どうかお元気で。」
すると先に試験雇用の手続きを終わらせたウサギのパティシエがゴブリンを迎えにやって来た。
「あの…行きましょう。サイラスさん。私のお店へ、ご案内します…これから一週間、よろしくお願いしますね。」
「へい、ルナお嬢様!」
「あたし達も帰ろう、黒羽。お店、またぐちゃぐちゃになっちゃった。」
「仰せのままに。」
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