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黒くて長い髪を後ろで緩く纏めて、赤い瞳に高身長。おぉ、いけてる!
…でも、何であたしの名前を?
「あの…貴方は…」
ころんはおずおずと尋ねた。
「失礼しました。つい…私の名は黒羽(クロウ)、と申します。鴉の亜人で御座います。…その、これを、見て頂けますか。」
黒羽、と名乗る亜人はネクタイを取り、スーツをはだけて左肩をころんに見せた。そこには、何かで貫抜かれた様な古い傷跡。
鴉…傷跡…
「…まさか…」
「あの時は本当に有難う御座いました。貴方が助けてくれなければ私は今頃井戸の中で朽ちていた事でしょう。」
「…嘘、本当に…?亜人さんだったの?本当に、あの鴉さんなの?」
「はい。『七面鳥』では御座いませんよ。」
「…ッ…!」
本当に、あの時の鴉さんだ。
「貴女に恩返しがしたくて、執事の資格を取りました。そして貴女が此処に来るこの時まで、他の方のお誘いはお断りしてきました。…どうかご検討頂けませんか?」
「…黒羽、貴方にまた会えた事、話せた事、あたしすごく嬉しい。…でもね、ここは皆が平等。例えあたし達に縁があっても、公平に判断を下すわ。それでも構わないなら、書類、見せてくれるかな。」
ころんは既に三つの書類を抱えていた。黒羽は書類と、執事学校推薦書を差し出した。それを受け取ると、向かいに用意されていたテーブルに書類を並べ、一枚一枚入念に見ていった。
一枚は初老の人間のもの。
一枚はエルフの若者のもの。
一枚はゴブリンのもの。
一枚は黒羽のもの。
書類には名前や年齢、種族、出身地、学校での成績や素行の評価が書かれていた。
だが一枚、黒羽の『執事学校推薦書』には、毎回成績トップ、四年制を飛び級で二年で卒業した事が書かれていた。
「うわぁ、あたしとは大違いだ…黒羽、そんなにあたしの為に頑張ってくれたんだ…」
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