契約と誓い

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悩みに悩んだころんは、暗い顔をして執事達の元へ戻ってきた。 まずころんは、エルフの若者に書類を返し、頭を下げた。理由は、自分には勿体無い程の知能。自分には釣り合わない、との判断だった。 そして次に初老の人間の男性に書類を返し、頭を下げた。ころんは腕力がなく、力仕事を全て初老の方に任せるのは忍びない、という理由だった。 そして黒羽のものと、ゴブリンのもの。これらを交互に見つめては再び悩んだ。 ゴブリンの扱いは非常に難しいと聞く。しかし、自分はこの執事となら、共に成長していけるのではないか、と考えていた。 一方黒羽は、文句無しの成績。自分の為にこれだけ頑張ってくれた証がある。 「オイ鴉さんよぅ、あの人間、少し変でねーかぃ?」 ゴブリンが小声で黒羽に話しかけた。 「ころん様が?何故です?」 「自分で言うのも何だがよ、どうして人間とエルフを捨ててあっしの書類をまだ持ってやがる?まさか、あっしがゴブリンだからって酷い遣われ方ァするんでねーか…」 「…そんな方が死にかけた無様な瀕死の鴉を、亜人と知らずに庇い男の蹴りを受け、その怪我が治ってもパティシエ学校をお休みになってまで看病し、お助けになるとお思いですか?」 「そんな…ますます変な人間だなァ…お前ェさん、何度も『言われた事』、あんだろ?」 「…はい。学校に入学する前も、した後も。ですが仕方ありませんよ。いつその謂れが生まれたかは解りませんが…長年の誤解は解けませんよ。」
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