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数十分後、さっきよりも暗い顔をしてころんは二人の前へ帰ってきた。そして、ゴブリンの書類を震える手で差し出した。ゴブリンは怒り、書類を乱暴に受けとると大声でころんに罵声を浴びせ始めた。
「そうか、お前ェさんあっしがゴブリンだからって期待させておいて…本当は一番最初に決めてたんだろ!それを自分が愉しむ為にあっしを最後まで残したんだろ!そして落胆させる、そうだな?そうだろ!あっしが!ゴブリンだからだ!人間はいつもそうだ、そうやってあっしらを邪険にしやがる!こちとら高ェ学費払って学校卒業してんのによォ!選ぶ側はいい気なモンだ!」
その罵声は会場中に響き渡り、会場はシンと静まり返った。
「貴方、その言葉は…」
「いいよ、黒羽」
反論しようとする黒羽を、ころんは制止した。そして怒るゴブリンの前に膝を付き、話始めた。
「…確かにゴブリン族は人間に邪険にされて生きている。食堂の厨房で働いているゴブリンは酷い遣われ方をしていると聞いた事があるわ。それにパティシエの間でも、ゴブリンの執事はゴブリンかオークに採用される事が多くて、人間の店に採用されるゴブリンは少ないと聞いたわ。…でもね、あたしはそんなの…種族なんて関係ないと思ってる。これから一緒に仕事をしていく中で、二人で成長していくものでしょう?雇い主であるあたしがしっかりしていないと、それは難しい。あなたが『自分がゴブリン族の執事である』事を負い目に感じているのなら、尚更よ。…あたしにそんな器は無い。学校を卒業して、執事を雇える権利を得た今でも、あたしはまだまだ半人前なのよ。」
ころんはそこまで話すと、涙を溢した。
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