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「あたしは学校での成績はとても悪かった。…その貴方の学歴書に書いてある成績の四段階は下だった。…そんなあたしの半分を執事さんが背負うのよ?あたしは酷い扱いと思わなくても、貴方は酷い扱いだと思うかもしれない。衝突を避ける為に気を遣う様な関係にはなりたくないのよ。…だから…ごめんなさい。」
ころんが自分の為に流した涙を見て、ゴブリンは何も言えなくなっていた。まさか人間が、そこまで考えていてくれていたなんて。
ゴブリンは何も言わずにゆっくりと列に戻っていった。
ころんは涙を拭うと、立ち上がり黒羽へと向き直り口を開いた。
「黒羽、貴方を試験雇用します。昔に縁があったからといって甘く見たりはしないわ。これは仕事よ。」
「存じております。」
列に戻ったゴブリンは、驚いてころんを見た。先程のしおらしさは全く無い。知り合いに向ける目ではない、厳しい『選ぶ側の目』をしている。そして、てっきり即採用かと思っていたが、試験雇用からだとは。ゴブリンは先程の自分を恥じた。
ころんは受付に試験雇用の旨を伝えると、黒羽を連れ会場を後にした。
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